【「紙博」にお越しいただいたみなさまへ】
春の嵐を乗り越えた東京では、初夏を思わせる爽やかな風が身を包んでいます。突風とともに駆け抜けた日々を終え、空もひと時の穏やかさを取り戻したよう。そう、この2日間はまさしく嵐のように現れて、去っていきました。
デジタルという新たな勢力の台頭により、暗雲が立ち込める“紙”の世界。「紙博」では、そんな翳りゆく状況の中に一筋の光が差し込んだかのように、紙が持つ底力を感じることができました。
思いの丈を綴るとき、ささやかな贈り物をするとき……。人が紙を手にするとき、そこには“誰かのために”という想いが込められているような気がするのです。人々が誰かを思い生み出した紙たちが、その手を旅立ち、訪れた人の心の琴線に触れる、そんなきっかけとならんことを祈るばかりです。
開催に向けて、台東館という新たな船を提供してくださった東京都立産業センターのみなさま、密な業界でしのぎを削りあう出展者のみなさま、その豊富な知識で驚きと感動を与えてくれたトーク出演者のみなさま、船を動かす原動力のごとく奔走してくださったボランティアスタッフのみなさま、そして、荒れくる大海原に果敢に挑んでくださった来場者のみなさま、本当にありがとうございました。この船の運命を共にするクルーとして、決して欠かすことのできない存在だったすべての方々に、心より感謝を申し上げます。
私たちの航海は、まだ始まったばかり。微かながらも、眩ゆい光を放つ次の島を目指して舵をとり続けていきます。次なる冒険の舞台で、みなさまと再会できることを楽しみにしながら。
「紙博」編集長
手紙社 藤枝梢